19歳で出産、夫は覚せい剤で逮捕、そして命を絶った――シンママの「絶望」と「愛」《日本の最貧困地帯 沖縄のリアル②》【神里純平】
日本の最貧困地帯 沖縄のリアル②
■お金はすべて覚せい剤に消え…
いつからだったのか、その時期ははっきりとは分からないが、大輔さんは覚せい剤に手を出していた。はまり込むうち、当然のように仕事はしなくなった。家にあるお金は全て大輔さんが使用する覚せい剤へと消えていった。生活に困窮した佐倉さんは、消費者金融で借金をしたり、カードのショッピング枠を目一杯利用することで日々なんとか乗り越えていた。しかし借金の総額が260万円になった頃にはもう、どこからも借金ができなくなった。
そんな時、さらに追い打ちをかけるように、大輔さんは覚せい剤の使用でとうとう警察に逮捕されてしまった。
家宅捜索で4、5人の警察官が乗り込んできた時に佐倉さんは大輔さんと別れる決心をした。子供の事を考えるとそうせざるを得なかった。
パンパンに膨らんだ借金は弁護士に相談し今でもコツコツと返している。弁護士には自己破産を勧められたが、佐倉さんの倫理観がそれを許さなかった。
自営業(翻訳者)の佐倉さんの収入は月に7万円から、多くても13万円程度だ。昔は18万円ぐらいあったが、現在は翻訳ソフトなどの普及でよっぽど大きな案件がない限り依頼がこなくなり収入は減っている。
外に働きに行くことも考えコールセンターなどの面接に行ったりもしたが、やはり3人の子供がネックでフルタイムで働くことは不可能だった。
役所から勧められて生活保護を受けるようになってもう13年になる。真面目な性格の佐倉さんは、翻訳で得た収入を正直に役所に申告をしているため、生活保護をもらえない月もある。これは余計なお世話であるが佐倉さんの場合、この真面目過ぎる性格も生活を苦しくしている一因のように思える。
沖縄は出生率が日本一だ。
佐倉さんの例は、沖縄の子沢山での貧困の典型的なパターンと言えるであろう。
よく子沢山家庭の親は「子供が二人いるのと三人とでは全然違う。三人子供がいたら、朝から戦争だよ」と言うが、佐倉さんのようにシングル家庭では、三人の子供の負担はさらに重くなる。